2002 VOL.111 No.4
 表紙写真
縮小するブータンヒマラヤの氷河と後退跡に形成された氷河湖

A Shrinking Glacier and Glacial Lake in the Bhutan Himalaya

 ブータン北部のルナナ地方から南側に抜ける峠,ガンリンチェンゼー・ラ(約5200m)の北側にある氷河と氷河湖の1998年10月13日の状態.
 この付近には海抜高度5000mを超える高原状の地形が広がっており,氷河は地形全体をおおって反対側の流域まで連続する氷原氷河となっている.この写真撮影の14年前,1984年10月にここを訪れた月原敏博氏(現福井大学地理学教室,当時京都大学山岳部)の写真によると,氷河末端は,現在の湖岸の左側にあり,湖は全く存在していない.14年間に氷河が縮小し湖が形成された.氷河末端位置の後退速度は,場所によるちがいがあるが,年平均21―25 m(内藤^n望:名古屋大学による)で,この値はネパールヒマラヤで観測された氷河後退速度と比較しても相当大きい.さらに内藤によると1998年10月から1999年10月までの1年間に氷河末端位置はおよそ50 m後退したという.後退速度は年々増大している.
 ブータンヒマラヤではこのように多くの氷河が縮小し続け,そのあとに氷河湖が形成され拡大し,拡大は加速している.これらの氷河湖はしばしば決壊する.下流に被害を与えた例もある.氷河縮小と氷河湖拡大のモニタリング,氷河湖決壊洪水の危険度評価,その災害防止策の策定は緊急の課題である.

(写真・文:岩田修二 Shuji IWATA)
 
目 次 
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 特集:アジアの山岳氷河と山岳永久凍土
岩田修二・平川一臣・松岡憲知 特集「アジアの山岳氷河と山岳永久凍土」の編集にあたって
473-475
81KB 
◇山岳氷河
総 説
   白岩孝行・山口 悟 カムチャツカ半島の近年の氷河質量収支変動と気候変動復元
476-485
2,114KB 
奈良間千之 20世紀の中央アジアの氷河変動
486-497
692KB 
論 説
    青木賢人 日本アルプスにおける氷河の高度分布特性と類型化
498-508
2468KB 
山縣耕太郎・曽根敏雄・澤柿教伸・MURAVYEV, Yaroslav D. カムチャッカ半島ビルチェノック氷河の完新世氷河変動
509-518
1,617KB
岩崎正吾・澤柿教伸・平川一臣 日高山脈トッタベツ谷における氷河底変形地層について
519-530
3,261KB 
◇山岳永久凍土
総 説
  松岡憲知 アジアの山岳永久凍土と周氷河環境
531-545
3,790KB 
論 説
   曽根敏雄 北海道,大雪山平ケ岳南方湿原のパルサの内部構造
546-554
1,310KB 
澤田結基・石川 守 北海道中央部,西ヌプカウシヌプリにおける岩塊斜面の永久凍土環境
555-563
1,412KB 
報 告
     福井幸太郎 立山,内蔵助カールのプロテーラスランパートでの永久凍土調査と地表面移動量の観測
564-573
2,926KB 
石川 守・岩崎正吾・澤柿教伸・平川一臣・渡辺悌二 北海道日高山脈ポロシリ岳周辺における山岳永久凍土環境―気温と地表面温度観測からの考察―
574-582
2,408KB 
青山雅史 温度状況および形態的特徴に基づく飛騨山脈槍穂高連峰における岩石氷河の活動状態の評価
583-593
2,333KB 
苅谷愛彦・小松陽介・青山雅史 仙丈ヶ岳,薮沢圏谷における礫の風化皮膜厚からみた完新世の岩石氷河流動の可能性
594-600
1,542KB 
 
書評・紹介
601-604
123KB
協会記事
605
67KB 
会   告
606-608
238KB 
 口 絵
1
日高山脈トッタベツ谷における氷河底変形地層の変形構造(岩崎正吾・澤柿教伸・平川一臣)
 
897KB 
2
アジアの山岳永久凍土と周氷河環境(松岡憲知)  
375KB 
3
北海道中央部,西ヌプカウシヌプリにおける岩塊斜面の永久凍土環境(澤田結基・石川 守)  
195KB