2004 VOL.113 No.3
 表紙写真
米国西南部ガダルーピ山地エル・キャピタン石灰岩

El Capitan Limestone in the Guadalupe Mountains, SW USA

テキサス州北西端,ニューメキシコ州との境にガダルーピ山地(Guadalupe Mountain)国立公園は位置する.米国西南部の広大な荒野に突出する同山地南端の2464mピークはエル・キャピタン(El Capitan)と呼ばれている.その名前が語るとおり,幌馬車時代はもとより飛行機の時代になってからでも,果てしなく続く荒野における絶好のランドマークとなっていた.
エル・キャピタンを構成する岩石は古生代ペルム紀中期(約2億6000-7000万年前)の石灰岩である.正面の垂直な崖は約300mの落差をもつ.当地域の石灰岩は,巻貝,二枚貝,フズリナ,腕足類,海綿,石灰藻,コケムシなど多様な造礁生物の化石を多産し,連続的な層序を保持していることから,中部ペルム系の模式地に指定されている.また,礁の大構造や形態,さらに礁から深い盆地への連続的な堆積相の側方変化が見事に保存されているので,本地域のCapitan Reef石灰岩は過去の礁複合体に関する古典的研究対象の一つとして知られている.当時,低緯度にあった超大陸パンゲア西部の浅海には巨大なバリアー・リーフが発達していたのである.
テキサス州西部はフライパンの把手に似た形をしているので,しばしばパンハンドル(Pan-handle)地方と呼ばれる.中でもMidland市周辺の盆地は油田地帯で,その貯油層が上述のペルム系であることから,Permian Basinと呼ばれている.表通りの店に架かっている“Permian Food Supply”,“Permian Real Estate”,“Permian Animal Crinic”などの地質屋にはちょっとユーモラスな看板を見ると,思わずペルム紀末の環境激変を被った動物達のことを連想してしまう.ちなみにペルム系の模式地はロシア,ウラル山脈の麓であり,テキサスではない.

(写真・文:磯崎行雄 Yukio ISOZAKI)
 
目 次 
English
本文PDF
 総  説
  楠本成寿 別府湾周辺の断層分布の力学的解釈
335-348
 301KB
 論  説
  長岡信治・古山勝彦 五島列島福江島,鬼岳火山群の噴火史
349-382
 603KB
 資  料
  日本地学史編纂委員会(東京地学協会) 日本地学の展開(大正13年〜昭和20年)〈その4〉
  ―「日本地学史」稿抄―
383-408
 212KB
 平成15年度助成研究・援助金報告
  鈴木毅彦・佐藤万理・
中山俊雄
東京地下における第四紀火山灰編年の確立―板橋区赤塚公園および大田区萩中公園地下に産出する前期更新世テフラの対比―
409-414
 89KB
藤井昭二・奈良正義・
畑中 盛・山口吾一郎・
堀内一穂・奈須紀幸・
竹内貞子・吉田明弘・
能城修一・鈴木三男・
邑本順亮
下北半島から発見された海底林とその意義
415-420
 155KB
遠藤匡俊 19世紀のアイヌ社会における和名化の展開過程
421-424
 38KB
長岡信治・奥野 充 阿蘇火山中央火口丘群のテフラ層序と爆発的噴火史
425-429
 50KB
岩田修二 天山山脈,ウルムチ河源頭6号氷河の20年間の変化の研究
430-433
 93KB
石原舜三・中島 隆 第5回ハットンシンポジウムの報告
434-436
 32KB
三ケ田 均・笠原順三・
浅川賢一・白崎勇一・
林昌奎・石井康義
第3回「海底ケーブルの科学利用及び関連技術に関する国際ワークショップ」報告
437-443
 137KB
松久幸敬 第13回ゴールドシュミット国際会議報告
444-448
 46KB
木下正高・上田誠也 23回国際測地学・地球物理学連合総会報告
449-450
 25KB
 
書評・紹介
451
453KB
 地学クラブ講演要旨
  藏田延男 並列直線で構成されている日本列島
452-453
 73KB
 紙  碑
  「故 早川正巳 会員のご逝去を悼む」陶山淳治
454
 22KB
 
協会記事
455
 18KB
会 告
456-459
 36KB
 口 絵 
口絵:天山山脈,ウルムチ河源頭6号氷河の20年間の変化(岩田修二・黒田真二郎)
 1.1MB