2007 VOL.116 No.1  
 表紙写真
葛飾北斎の浮世絵,俗称『波間の富士』(1831-1833年頃)

 地球規模の水の大循環が起こす地球固有の造形美の典型的な例.日本の自然は雨風による浸食と四季が作り出す植物相の変化だけによるものではない.同じように四季を持つロンドンやニューヨークとは異なり,日本列島はプレート収束境界に位置する.それが日本の自然美を特徴づけている.日本列島の中でも富士山は地球上に二つしかない海溝三重点の上にあり,しかも,そこに火山を生じている例外的な特異点である.富士山はまたマントル深部へ循環する水がマグマとともに地表に戻る出口にもなっている.富士山のような高山は刻々とした変化を気象に与え,雲を湧かせ,高度に応じた彩色豊かな植物相の原因となる.風は波を引っ張り,その波が海岸を浸食し,日本列島の外形を変えてゆく.
 北斎(1760-1849)は江戸時代後期に現れ,歌川広重と双璧をなし,日本の自然美,とりわけ富士山を題材にして,本質を誇張した奇抜なデザインと彩色で一世を風靡した.彼の描いた浮世絵は日本だけでなく,世界で賞賛されるが,北斎漫画(絵の描き方の教科書,1814年に初版,最終的に15版)はヨーロッパまで伝わり,ゴッホやゴーギャンに強い影響を与えた.日本人の独創性が世界を凌駕した希な例であり,北斎は日本の美術史の中で最高の画家にランクされる.その理由は彼の浮世絵技術だけでなく,富士山に象徴される日本の自然美の本質の理解が挙げられる.

(説明:丸山茂徳)

(表紙:葛飾北斎 冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」,アダチ版画研究所復刻)
   
目 次
English
本文PDF
 特集号『水;地球中心核から大気まで』
      丸山茂徳・江口孝雄・笠原順三・下司信夫・松本 淳・松山 洋・山川修治 はじめに:特集号『水;地球中心核から大気まで』
1-6
168KB
新井 正 風土としての日本の水 ―自然地理の視点から―(総説)
7-22
360KB
肥田 登 六郷扇状地における地下水人工涵養の実施と成果(短報)
23-30
368KB
沖 大幹・鼎 信次郎 地球表層の水循環・水収支と世界の淡水資源の現状および今世紀の展望(総説)
31-42
432KB
中山幹康 国際流域での水の分配をめぐる係争と協調(論説)
43-51
156KB
森 和紀 地球温暖化からみた水文環境の変化(総説)
52-61
1MB
小泉 格 気候変動と文明の盛衰(総説)
62-78
776KB
田近英一 全球凍結と生物進化(総説)
79-94
676KB
小宮 剛 地球の海水組成と生命の進化46億年(論説)
95-113
1.6MB
小原一成 スロー地震と水(論説)
114-132
7.8MB
栗谷 豪 水とマグマ(総説)
133-153
1.2MB
駒林鉄也 含水カンラン岩の相関係と地球内部における水循環への応用(総説)
154-173
600KB
岩森 光 沈み込み帯とマントルでの水循環(論説)
174-187
1.4MB
奥地拓生 地球中心核と水 ―地球形成時の水素分配反応―(総説)
188-195
296KB
生駒大洋・玄田英典 地球の海水の起源(総説)
196-210
196KB
 図書委員会報告・案内
  江藤哲人 地学雑誌バックナンバーCD作成の経緯・報告
211-212
44KB
 CDバックナンバーから古典論文の紹介
          千歳壽一 地学雑誌 第一集第一巻 創刊論説「地学雑誌発行ニ付地理学ノ意義ニ解釈ヲ下ス」に感じる創刊時代の雰囲気
213-214
52KB
 
書評・紹介
215-216
40KB
ニュース
217
217KB
協会記事
218-220
52KB
会 告
221
20KB
 口 絵
  口絵1:日本の火山における山麓湧水の分類とその分布の特徴(安形 康)  
320KB