第247回地学クラブ講演会

平成20年12月19日(金)15時~ 
東京地学協会講堂   
~開始時間が通常より1時間遅いのでご注意ください~

演題:DNA解析による人類の起源とその拡散について   
講師:篠田謙一(国立科学博物館・人類研究部)

要旨:
20世紀後半から始まる分子生物学の発展は、生物学の分野に大きな 変革をもたらしました。特にヒトゲノム計画の推進にともなってDNA配列の読み取り過程が半自動化されたことで、現在では短時間で数多くのDNA配列を得ることが可能になっています。中でもヒトのDNA配列は、様々な遺伝疾患の解明のために急速かつ大量に収集が行われています。  現代人集団に見られる遺伝的な多様性の源は、人類の世界拡散の過程で地域集団内に生じた突然変異にあります。従って、その変化の系統をたどれば拡散の様子を再現することが可能です。分子人類学はこれらのデータを利用して、現代人の起源や拡散に関するシナリオの構築を目指しています。特に組み換えなしに子孫に伝わるミトコンドリア(母から子どもへ)とY染色体のDNA(父から息子へ)の系統は、そのまま女性と男性の移動の様子を示すので、この分野の研究でよく用いられています。  本発表では、これまでの分子人類学の研究の成果を概観し、人類拡散の歴史がどこまで明らかになっているのかを解説します。また今後の研究の方向や、その問題点等についてもお話ししたいと思います。