東京地学協会 春季公開特別講演会『日本と世界の奇岩に見るジオ多様性』

 日本人ほど身近に石と親しみ、石に名前を付け、石にあれこれの歴史や思いを忖度し、種々楽しむ民族は少ないのではないでしょうか。垂直な壁のような岩塊を「屏風岩」、水平な床のような岩塊を「千畳敷」、2つの近接した大小の岩塊を「夫婦岩」などと名付けるありふれたネーミングから一度や二度聞いても理解しがたい奇怪な名称などをもつ奇岩怪石の数々。自然が彫琢した岩塊に名を付け、季節とともに嘆賞するのみならず、ある時は畏敬の対象として崇めたりしています。こうした岩の形状は、その岩質・地質を反映し、地殻変動や風化浸食を踏まえて、また民俗歴史的な謂れを持って私たちに迫ってきます。本講演会では、さまざまな日本・世界の奇岩をスライドで紹介し、その成因について若干の考察をしたものを紹介し、地質について皆様の関心を深めていただく一助にしたいと思います。お誘い合わせてお出でください。

平成26年5月17日(土)東京地学協会地学会館講堂

14:00~15:00

加藤碵一(東京地学協会理事・産業技術総合研究所名誉リサーチャー・NPO地質情報整備活用機構GUPI会長)

「日本奇岩百景とジオ多様性」

 「奇岩」とは、珍しいあるいは不思議な形状をした岩石(塊)のことで、「奇岩怪石」とも言われてきました。地質研究者には、奇人と呼ばれる人も多くいます。それはともかくこうした石・岩の幾何学的多様性と成因や石・岩の形象に見るジオ多様性を探ってみようと思います。一方、それと直接関係する「ジオ多様性」を小難しく言えば、地圏(おもに地殻表層)における地質作用の集積によって形成された地質事象間の特異性をいうものとし、事象内の多様性、事象間の多様性及び事象の複合性の多様性を含み、ある地域における鉱物・岩石・土壌・地層・岩体・地質構造・地形・地殻変動などの様々な階層における総体の多様性及び地圏と気圏・水圏・生物圏(人間社会を含む)との相互作用による変化の多様性を意味します(私案)。一言でいえば、人生いろいろ、石もいろいろというわけで、理屈はともかく、ご一緒にスライドを眺めて日本各地の奇岩を巡って楽しみましょう。それから、同じ岩質なのに違う形になったり、異なる岩質なのに違う形になったりするわけ(ジオ多様性の素因)をちょっと考えてみましょうか。この分野は、必ずしも専門家の見解が正しいとは限らず、一般の方々の直観の方が本質を見抜くかもしれません。あれこれ言い合いましょう。楽しみですね。

15:00~15:15休憩
15:15~16:15

須田郡司(石の写真家・巨石ハンター)

「世界奇岩巡礼」

 大きな石や奇岩に魅せられ、日本と世界の石を巡りつづけて20年あまりになります。 なぜ、石を巡っているのかとよく聞かれますが、理屈抜きで「石」そのものが面白く、 特に奇岩を巡ることが好きだからです。

 石には何億年もの歴史が秘められています。地下のマグマ溜まりや熱帯のサンゴ礁、 そして深海の底などで生まれた石たちは途方もない時間の果てに地表へと顔を出し、 やがて風化浸食を受けて地球の繰り返す営みの中に還ってゆきます。これら目にでき る石たちは、そんな輪廻(りんね)の中でほんの一瞬だけ太陽を見ることを許された 特別な存在です。石たちとの出会いは、まさに奇跡です。

 世界の奇岩は、様々な環境の中で存在します。街から遠く 離れた秘境にひっそりと 佇むもの、圧倒的なスケール感があるもの、古くから先住民に信仰されているものな ど。世界奇岩巡礼では、これまで私が訪ねて世界50カ国の中から、特にお気に入り の奇岩をスライドで紹介します。奇岩と出逢うまでのエピソードをお話しながら、世 界の奇岩巡りを楽しんで頂ければ幸いです。

16:15~簡単な懇親会