第300回地学クラブ講演会(3月)の予定が決まりましたのでお知らせします。一般(非会員)の方々も気軽にご参加下さい。多数の方々のご来場をお待ちしています。

日 時:平成29年3月14日(火)15:00 ~ 16:00

場 所:東京地学協会地学会館2 階講堂(東京都千代田区二番町12-2)

交 通:東京メトロ麹町駅5出口を出て左へ徒歩1分
    日本テレビ向い JR市ヶ谷駅から徒歩7分、四ッ谷駅から徒歩9分)

講演者:森下泰成(海上保安庁海洋情報部)

演 題:西之島火山の噴火と島の拡大

要 旨:

 小笠原諸島の西之島は,伊豆・小笠原弧の火山フロントを構成する,比高3000mを超える火山(西之島火山)の頂部の一部が海面上に現れたものである。この西之島火山で,2013年11月に約40年ぶりの(海底)噴火が発生し,新島が形成された。その後約2年間に及ぶ溶岩流出により新島は元の島と接合し,さらにそれを覆って大きく成長した。島の面積は約2.68km2(2016年9月時点)で,噴火前の島の約12倍となっている。

 海上保安庁では,船舶の安全を確保するため,噴火を確認後直ちに噴火の発生を航行警報で航海者に向け周知するとともに,以降,ほぼ毎月1回の頻度で航空機による観測を行い,火山活動と島の変化を監視してきた。2015年6~7月には,噴火開始後初となる島の周辺海域の海底調査を実施し,陸海の地形変化に基づく今回の噴火における推定マグマ噴出量(2015年7月の時点まで)は約1.6億m3であり,近年の日本で発生した噴火のなかでは雲仙普賢岳の噴火(1991~1995年)の2.4億m3に次ぐ規模であった。噴火は2015年12月以降確認されなくなり,静穏な状況が継続している。2016年8月には噴火開始以来だしていた航行警報を解除した。

 噴火以前から西之島は,その低潮線(=大潮の干潮時の海面と陸地の境界)が領海や排他的経済水域を根拠づける基線となっていた。今回の噴火によって島が拡大したことから,海図を改訂し新たな基線を決定するため,海上保安庁は2016年10~11月に西之島とその周辺海域の測量を実施した。12月現在,海図改訂に向けた作業が継続中であるが,早晩新たな海図に基づいて領海および排他的経済水域が拡大する見込みである。

 日本は火山国であるが,人の一生のなかで火山噴火により新たな領土が形成される様子を目の当たりにする機会は滅多にない。西之島火山の噴火は,国連海洋法条約発効後初めての領土・領海等の拡大に繋がる噴火事例であり,観測・測量という地味な国の活動の意義を再認識する重要なイベントであったといえる。