第313回地学クラブ講演会(12月)の予定が決まりましたのでお知らせします。一般(非会員)の方々も気軽にご参加下さい。多数の方々のご来場をお待ちしています。

日 時:令和元年12月19日(木)15:00~17:00
15:00から 蛭田明宏 氏
15:40から 小室 譲 氏
16:20から 佐々木夏来 氏
場 所:アルカディア市ヶ谷(会場は当日入り口に掲示します。)
東京都千代田区九段北4-2-25 (電話)03-3261-9921
交 通:地下鉄有楽町線・南北線・新宿線・JR総武線「市ヶ谷駅」下車2分


講演1「柏崎西方の円錐台地形が泥火山なのか判断する」

講演者:蛭田明宏(明治大学 研究・知財戦略機構 特任講師)
要 旨:

 日本海上越沖は新潟-神戸歪集中帯に属しており、同じ構造体の陸上では泥火山の存在が知られている。未調査の部分が多い海底にも泥火山が分布している可能性があるので、柏崎西方の水深550mに位置する円錐台地形を調査した。ガスプルームは見られなかったが、ガスハイドレートが海底面付近に分布する、特異な場所であった。回収した堆積物の一部には、古い年代を示すメタン由来炭酸塩や珪藻化石がわずかに含まれていた。海底観察では地形の隆起が起こっていると思われる急斜面や崩れた堆積物の塊が観察された。隆起の高低差からすると、これらの古い物質の分布は十分に説明できない。下から堆積物を押し上げる力が働いている場所で、短期間に泥火山の様に泥を噴き出す活動があった可能性がある。古い物質が見られる原因を特定するために、調査を継続している。


講演2「地域労働市場からみた国際山岳リゾートの持続性について-カナダ、ウィスラーを事例に-」

講演者:小室 譲(筑波大学・大学院)
要 旨:

 欧米諸国における国際山岳リゾートでは、昨今のツーリズム需要の増加を背景に、労働力需要の拡大が生じており、産業の持続的観点から外部労働力の重要性が議論の中心にある。そこで、本講演は北米を代表する国際山岳リゾート、ウィスラーを事例に、そこでの地域労働市場の持続性に関して、とくにツーリズム産業における外国人労働者に着目して検討する。

 現地調査の結果、ウィスラーはカナダの積極的な移民政策のもとで外国人労働者を取り込んだ地域労働市場が存立していることが示された。外国人労働者は、著名大規模な山岳リゾートの定住労働力の供給源となり、多様なスキル需要に対応し、さらに季節性や時間帯の繁閑リズムに柔軟に対応することによって地域労働市場の基盤となっている。さらに地域労働市場は、①語学や職業スキルを磨き、昇進や転職、起業を通じて永住ビザを獲得して定住する過程、②ワーキング・ホリデービザをもち季節労働力として発地国や次の移動先との間を循環する過程という、主に2つの過程にもとづいて持続性を有することが指摘された。当日はそれら明らかになった過程に対して、地域労働市場の取り巻く社会、経済、環境面などから、国際山岳リゾートの持続可能性を検討する予定である。


講演3「八幡平地域の湿地の形成と発達を地形から考える」

講演者:佐々木夏来(東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教)
要 旨:

 八幡平地域の湿地(湖沼や湿原)は、噴火口や緩やかな火山原面上だけではなく、地すべり地内にも形成され、多様な形成要因の湿地が共存していることが特徴である。これまで、湿地堆積物は気候変動や植生復元のプロキシとして利用されてきたが、湿地そのものを対象とした地形学的な研究は非常に少ない。

 講演者らは、火山原面上と地すべり地内で複数の掘削調査をおこない、湿地の成立要因と発達過程について検討を重ねてきた。火山原面上の安比高原湿地群は、浅層地下水面と地表のわずかな凹凸面と関係で湿地が成立し、複数の湿地で同じような発達を遂げていた。一方で、菰ノ森地すべり地では、湿地の分布が地すべりに特徴的な地形に規定され、発達過程は土塊の侵食や解体の影響が反映されて様々であった。


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