地学クラブ講演会
「濃尾地震から120年、地質屋の地震・断層の研究史」

講師:松田時彦氏(地震予知総合研究振興会)

日時:平成24年1月20日(金)14:00~
場所:東京地学協会講堂

要旨
昨年は東日本の大震災の年であったが、濃尾地震から120年の年でもあった。この間地質屋は、大地震が大地に遺した地震断層や活断層などをその現場で調べて断層の動きや断層と地震の関係を理解しようとしてきた。講演では、その地質屋の研究を地震計による地震学者の研究と絡めながら振り返ってみる。 とくに地震の断層原因論が確立された1960-70年代以降は、我々が直接経験した時代であり、筆者の当時の経験も加えて回顧してみたい。
第Ⅰ期(明治・大正期):濃尾地震後大正関東地震頃まで地震の原因は地質学でいう断層そのものの動きであるという小藤文次郎の断層原因論の時代であった。
第Ⅱ期(昭和前期の1950年代まで) 関東地震を契機に始まった地質屋・地震屋による百家争鳴の時代である。マグマ流動説や地塊運動説では断層は地震の結果であるとみなされた。
第Ⅲ期(1960-1980年代)  1960年代に断層原因説が地震学者によって確立された。一方、地質屋によって活断層からの地震現象の理解が進んだ。
第Ⅳ期(平成期)  阪神淡路大震災(1995年)以後、前兆による地震予知が見直され、替わって活断層による地震の長期予測が政府から公表されるようになった。
沖合の大地震に対しても沿岸の隆起地形や津波堆積物の調査か行われていたが、2011年に大方の予想外にあった巨大な地震・津波が突如発生した。
研究が進むと未来への予測力を持つようになる。未来を知るために過去を知ることのできる地質屋の貢献が必須である。