第267回地学クラブ講演会
「わが国における液状化履歴と東日本大震災による液状化被害」

若松 加寿江(関東学院大学工学部社会環境システム学科 教授)

平成23年9月20日(火)午後3時より
於:東京地学協会講堂

要旨:
講演者は、様々な歴史資料,学術文献,現地踏査,聞き取り調査などから,西暦745年から2008年までに発生した150地震による液状化地点1万6688件のデータを,詳細な分布図,地方別分布図,液状化地点のカタログ,GISデータとして集大成し,今年3月にDVD付き書籍「日本の液状化履歴マップ745-2008」を上梓した。講演では,上記の書籍に収録された我が国における液状化履歴地点とその特徴,液状化が起こりやすい地形・地盤条件などを紹介・解説する。
今年3月11日に発生した東日本大震災では,関東地方から東北地方の南北約500kmの広い範囲で液状化被害が発生した。特に関東地方の液状化被害は著しく,1都5県の100市区町村で液状化が発生し,極めて深刻な家屋被害だけでも約2万4000棟にのぼっている。
以上のように,被害範囲や被害程度から見ると世界の液状化史上,未曾有の液状化被害と言えるが,液状化が起きた地点は過去の液状化履歴地点と同様な地形・地盤条件のところに集中しており,想定外の場所での液状化はなかった。また,この地震による液状化の特徴の一つとして,過去に液状化の履歴がある地点で再び液状化が起きる「再液状化現象」が多く見られたことである。現在までに判明しただけでもその数は約70箇所に及んでいる。
我が国では,液状化が起こりやすい低地や埋立地に大都市が立地し,人口・構造物・資産が集中している。過去に起こった液状化の履歴を把握することは,構造物の立地,土地利用,防災計画などを考える上で極めて重要と言える。