今回の地学クラブ講演会は区切りの第300回を迎えたため、はじめに野上道男会長から挨拶があった。
▲挨拶:野上道男 東京地学協会会長
 講演では、40年振りの噴火で大きく成長した西之島の最新情報を、海上保安庁海洋情報部によるの2015年海洋調査の現場班長から直接聞くことができた。また、持参された実物の火山岩に触れることができ、噴火や観測・測量活動の動画が上映され、講演後には熱心な質疑があった。
西之島火山の噴火と島の拡大
海上保安庁海洋情報部 森下 泰成 氏
日 時:平成29年3月14日(火)15:00~16:30
場 所:東京地学協会 地学会館2F会議室
発表スライド:[PDF]
出席者数:21名
要 旨:

 小笠原諸島の西之島は,伊豆・小笠原弧の火山フロントを構成する,比高3000mを超える火山(西之島火山)の頂部の一部が海面上に現れたものである。この西之島火山で,2013年11月に約40年ぶりの(海底)噴火が発生し,新島が形成された。その後約2年間に及ぶ溶岩流出により新島は元の島と接合し,さらにそれを覆って大きく成長した。島の面積は約2.68km2(2016年9月時点)で,噴火前の島の約12倍となっている。

 講演では、海上保安庁海洋情報部の任務と火山観測、1973年~1974年、2013年~2015年の西之島火山の噴火活動、2015年夏の現地調査、さらに、海図改訂の意義と2016年の西之島周辺海域の水路測量が紹介された。

▲講演者:森下泰成氏▲西之島の火山岩
質疑応答
質問1:明神礁噴火にともなって出来た島は、噴火後短期間で消失したが、西之島火山は大きく成長した。西之島が大きくなったのはなぜか。マグマの組成の違いが原因なのか、それともそれ以外に原因があるか。

(回答):マグマの組成は西之島(安山岩質)に比べ、明神礁はデイサイト質で粘性が高い。一方、昭和硫黄島は流紋岩質でだが島ができて現存しており、単に組成だけの問題ではない。明神礁は一時期100m近い高さの新島が形成されたが、爆発により吹き飛ばしてしまった。噴出量、粘性も重要だが脱ガスのメカニズムも関係してくると思われる。

質問2:西之島火山のコーンの成長速度はどの程度か。コーンは噴火のどの段階でできはじめたか。

(回答):噴火の比較的早期にできはじめた。最大で150mの高さまで成長した。

質問3:現在の西之島は、今後どの程度の期間残ると推定するか。

(回答):山体が大きく崩壊することがない限り、相当な期間残ると考えられる。

質問4:西之島は行政的にはどこに属するか。

(回答):新しく形成された土地は、いずれ正式に小笠原村に編入される。

質問5:噴火が始まってから今日までに、マグマの化学組成はどう変化したか。

(回答):まだ不明。各場所の溶岩流の噴出時期が判っているので、今後系統的なサンプリングによって明らかにされるだろう。

質問6:2014年8月段階で西之島の海岸に浸みだしていた黄色の濁りの正体はなにか。

(回答):測定していないがFe、Alを含む沈殿物であると思われる。硫黄成分は判らない。