山屋勇一郎(宮城県高等学校社会科教育研究会地理部会 地理部長)

開催日

 2024(令和6)年9月24日(火)

巡検場所

  • 「白沢層の大露頭」(断層・褶曲構造の観察)
  • 「大手門層と日陰層の岩相分」(カルデラと海底堆積物の観察)
  • 「大倉ダム」(日本唯一のダブルアーチ式コンクリートダム)
  • 「定義山と周辺の地形」(ハザードマップと地形の比較)
  • 「ニッカウィスキー仙台工場 宮城峡蒸溜所」見学(産業の立地条件)

参加者数

 24名

内容と成果

テーマ

「東北日本の成り立ちを巡る旅〜仙台に巨大カルデラがあった!?〜」

趣旨

 新課程「地理総合」で重視されている、防災やフィールドワークなどの実学的な研修を充実させるために、地学教諭を講師に迎え、教科横断的な視点を取り入れた。自然地理学と地学の双方の視点から、今後の探究活動とつながる視座を学ぶことにより、教育現場に還元することが期待できる。

巡検地の概要
  • 白沢層の大露頭
     広瀬川の河原より、対岸に見える白沢層の露頭を観察した。白沢層は、白沢カルデラ内のカルデラ湖の堆積物により形成された湖成層で、凝灰質シルト岩で形成されている。
     褶曲・断層面が見られる露頭から、白沢層の痕跡を観察し、河原の岩石からシルト岩などの特徴を把握した。
白沢層の褶曲した露頭
  • 大手門層と日陰層の岩相分布
     白沢層より更に古い、大手門層と日陰層が確認できる豆沢川へ移動し、断層の様子や表出した岩石を観察しながら上流部まで歩いた。日陰層は、白沢カルデラ形成前の中新世中期から後期に水没した海底で堆積した泥岩で形成され、その上に堆積した大手門層は、中新世後期に隆起して形成された白沢カルデラ内の火山活動に伴う、火砕流堆積物による凝灰岩で形成されている。
     川沿いに流されずに残った岩や日陰層と大手門層の境界が見られる断層面、大手門層が見られる平坦な河床などを観察した。
大手門層の平坦な河床(豆沢川)
  • 大倉ダム
     大倉ダムは仙台市を流れる大倉川上流に建設された、日本で唯一の「ダブルアーチ式コンクリートダム」である。洪水調節・かんがい・上水道・工業用水・発電などの役割がある多目的ダムである。
     当日はダムの堰堤からアーチの様子を見学、管理事務所ではダムの特徴や管理状況について所員から話を伺った。
  • 定義山と周辺の地形
     昼食休憩後、定義如来西方寺周辺の傾斜地を3箇所巡り、複数のハザードマップを比較する見方を学んだ。
     同じ傾斜地でも「J-SHIS MAP」と「重ねるハザードマップ」の記載が異なること、実際の傾斜地とハザードマップの記載内容が一様ではないこと、「J-SHIS MAP」に見られる山体移動の痕跡を遠景で確認できたこと、など、実際の地形を目の前にして、ハザードマップを複合的に見ることができた。
  • ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸溜所
     この工場は作並温泉に近い、広瀬川と新川の合流地点ほど近くに建っている。
     ニッカウヰスキーの前身「大日本果汁㈱」は1934(昭和9)年、創業者竹鶴政孝によって北海道の余市で創業したが、第二のモルト蒸溜所として、1969(昭和44)年に宮城峡蒸留所が建設された。宮城が選ばれた理由は、年間平均気温が10℃前後(余市は8℃前後)であること、海岸にある余市とは異なる内陸地であったこと、さらにウイスキー作りの必須条件、「水質の良い水が豊富にあること」、「湿潤な風土であること」、「清浄な空気と緑豊かな環境」が整っていたからであった。
     当日は、製造工程を見学し、ウイスキーづくりやウイスキー市場の現状などを伺うことができた。