行事委員会 「地図講座」担当 杵島正洋

講座A・B

日程

 2025年8月7日(木)

  • 10:00~12:30 講座A:『Web地図で教材化、 授業づくりにひと工夫』
    講師:太田 弘 氏 日本地図学会常任委員・評議員
  • 13:30~16:00 講座B:『3次元地質地盤図で読み解く 首都圏の地盤と災害リスク』
    講師:中澤 努 氏 産業技術総合研究所 地質標本館館長

場所

地学会館2階講堂

 連日の猛暑で集まりを心配しましたが、30人を超える参加者を集め、大変盛況な講座となりました。午前の太田先生は、一般的な地図の読み方にとどまらず、Web上の地理院地図のさまざまな機能の実践から裏技の紹介まで、まさに「教材づくり、授業づくり」にとても有益なお話をしていただきました。午後の中澤先生は、ご自身のグループの研究成果である首都圏の地盤の解析、特にこれまで安全とされていた台地内部にも、局所的に地震の揺れを増幅する場所があることを、ご紹介いただきました。お二人とも、参加者をひきつける興味深いコンテンツとお話をご用意いただき、各2時間半の講演時間があっという間に過ぎてしまいました。

巡検C 「地形図を持って、河岸段丘の崖線、 湧水、断層地形を観察しながら歩く」

日程

 2025年10月19日(日)

場所

 東京都国立市・府中市 矢川・谷保(立川崖線・青柳崖線と湧水、立川断層)

講師

 藤平秀一郎 (茨城県立結城第一高等学校 主管教諭)

 当日は雨がたたきつけるあいにくの天気でしたが、集合場所の矢川駅には約40人の参加者が集まりました。講師は段丘地形の専門家、結城第一高校の藤平秀一郎先生。持参したホワイトボードに河岸段丘の断面模式図を示しながら説明します。

 矢川駅から南武線線路に沿って西進。北側には立川崖線が迫ってきます。崖線と線路が交差するところで線路を横断、崖下の矢川緑地で標高差(断層運動も重なる?)および湧水を観察したら、矢川に沿って青柳面を南下します。青柳面の末端の崖(青柳崖線)には、ママ下湧水と呼ばれる湧水群がみられ、府中市が保存する緑地になっています。雨が降りしきる中、ハケ下に沿った道を東進し、城山公園を経て、今度は崖を登り段丘面に出ます。谷保天満宮で最後の湧水探し。湧水を見つけ、記念撮影をして、夕方ここで解散しました。

 参加者は雨の中でも熱心に講師のお話を聞きながら、台地の構造と崖や湧水を実際に見て歩くことで、理解を深められたようでした。毎年参加される常連の方々も多く、一部の参加者は運営のサポートにも加わっていただきました。地図講座という企画がしっかり根付き始めたことを改めて実感する回となりました。一方、参加者が大人数だったため講師の声が末端まで届きにくく、説明が聞こえないとの意見もありました。次回に向けての課題になりました。

参加者の感想(一部)

  • 崖下に湧水があるのは知識として知ってはいましたが、今回訪れた谷保天満宮の湧水はまるで山梨の忍野八海の湧水を連想させるほどで、その透き通った水質に驚かされました。恥ずかしながら東京にあの規模の湧水池があったとは思いもしませんでした。また豊富な湧水を利用した水田の風景、用水を利用した洗濯場跡などを実際に見学でき、昔の人の生活が今も息づいているような感覚がありました。
  • こんなに身近でも地質学的に興味深いところがあるというのは、新たな 発見で、地質学の面白さを再発見した気分になりました。
  • 青柳面の見どころを巡り、湧水の豊かさと地元の方々の昔の暮らしぶりに触れ、段丘の作り出す高低差の魅力に改めて気づかせていただきました。 藤平先生の親しみやすく分かりやすい説明も良かったです。
  • 列が長くなった為、藤平先生の話がよく聞こえなかったのが残念でした。

 講師の藤平秀一郎先生には配布資料作成から当日の案内まで熱心にご対応下さり、心より感謝申し上げます。また、解説の補助をしていただいた先生方、参加者でありながら集金など運営をサポートしてくれた方々にも、心から御礼申し上げます。

巡検D 「河川争奪など地形地質の成因と 人間の関わりを考えながら歩く」

日程

 2025年11月16日(日)

場所

 東京都北区・台東区・文京区 王子・飛鳥山・谷根千・本郷・不忍池

講師

 杵島正洋 慶應義塾高等学校 教諭

 直前にインフルエンザが大流行し、10人近いキャンセルが発生しましたが、それでも参加者とスタッフ合計約50人という大人数での実施となりました。前回の反省を踏まえ、講師はマイクとスピーカーを装備、さらにワイヤレススピーカー2台をスタッフに持たせ、講師から離れた場所でも説明が聞こえるようにしました。各所で解説を加える専門家も揃い、この日は快晴の下、朝10時の王子神社から巡検がスタートしました。

 この巡検のメインは石神井川。まず音無渓谷とさくら緑地(かつて石神井川が蛇行した跡)で、都内には珍しい自然露頭(ブラウンス露頭)を観察しました。明治時代、お雇い学者ブラウンスによって研究され、多数の貝化石の産出が報告された、学術的にとても貴重な露頭です。スタッフの中澤努氏と川辺文久氏による丁寧な解説もあり、参加者は地形や露頭のでき方を深く理解できたようでした。その後、北区立飛鳥山博物館を見学。ここでも展示された地層標本や展示物について専門家の詳細な解説があり、参加者にとって大変贅沢な時間となりました。

 昼食と移動のため一旦解散し、日暮里駅で再集合。細く残った台地を降りると、かつての石神井川が南進してできた谷中の低地にたどり着きます。下町の雑踏を抜けて根津神社へ。ここは本郷台側の斜面からの湧水があり、地形を生かした神社の成り立ちについて考えました。さらに斜面を上がって東京大学本郷キャンパスへ。キャンパス内の崖線と三四郎池の成因などを考えながら、再び斜面を下って不忍池に到着、最後は不忍池から排出する水路の遺構を観察し、ここで終了・解散となりました。

参加者の感想(一部)

  • どの観察場所でも、ていねいな解説があり、とても分かりやすかったです。飛鳥山博物館では、地層の断面を前にして、私の理解不足な点を複数の方に直接おたずねし、どなたからも私が分かるようなことばでかみ砕いて教えていただき、たいへん感謝しております。
  • 今回、スピーカーで後ろの方にも声が聞こえるようにされていたのはとても良かったと思います。私も後ろにいた際、声がよく聞こえてとても助かりました。
  • コース、内容共に厳選されていて、専門的な内容と観光要素を織り交ぜたとても楽しく有意義な時間でした。エリアへは行ったことがありましたが石神井川はほとんど知らなかったので資料をよく読んで復習したいです。家族や知人にも地形を見て知る楽しさを少しずつ伝えていきたいと思いました。また機会がありましたら参加させていただきたいです。
  • 綿密に準備されたコースと、詳細美麗な解説資料、専門家の方々の解説などなど、大変楽しめました。参加者の方々の食いつきがまた素晴らしかったですね。天気もよくて幸いでした。
  • 質問に答えてくれる専門家の先生方が、各場所に複数人いらっしゃって、みなさん気さくに応対してくださり、わかりやすく説明してくださったのは大変ありがたかった。

 感想欄にもあるように、今回の巡検ではスピーカーを複数台用意し、大人数での巡検対策を講じたことが、参加者にも大変好評でした。また専門家の方々による解説が大変好評で、一般向けという講座に学術的な奥行きを与えてくれました。スタッフの中澤努氏、川辺文久氏に加え、本郷周辺の解説をしていただいた関東学園大学の瀧上豊様にも、厚く御礼申し上げます。