中高生や大学生、学校の先生を主な対象とした特別講座です。国土地理院発行の地形図やWeb上の地理院地図について読み取り方や多様な利用方法を学んだり、地質図の概念や描き方について学んだ上で日本列島の成り立ちを考える講座を行った上で、実際に地図を持って地形を観察しながら歩く、という3回シリーズになります。

講座A(第1回講座)「地形図や主題図を楽しもう」

日 程

令和元年8月29日(木)13:00~16:30

場 所

地学会館2階講堂

参加者

34人(中高・大学生5人、中高校の先生10人、その他19人)

講 師

宇根 寛(日本地図センター客員研究員・元国土地理院 地理地殻活動研究センター長)

 夏休み終盤の暑い日でしたが、中学生から70歳以上の方まで、遠くは東北や関西からも参加者がいらっしゃいました。今年3月まで国土地理院のセンター長を務められた宇根先生を講師に招き、地形図についての基本的な講座や、実際の地形図を用いて読図の実習、各自が持参したスマートフォンやタブレット等を用いてWebの地理院地図の使い方を学んだりしました。後半には各種の主題図の紹介もあり、多様な地図がさまざまな場面で利用されていることがよくわかりました。最後には活発な質疑応答もあり、とても充実した講座になりました。

講座B(第2回講座)「地質図から日本列島を読み取ろう」

日 程

令和元年8月30日(金)13:00~16:30

場 所

地学会館2階講堂

参加者

38人(中高・大学生6人、中高校の先生9人、その他23人)

講 師

高橋雅紀(産業技術総合研究所 上級主任研究員)

 前日に引き続きの講座ですが、会場に溢れそうなくらい多数の参加者が集まりました。講師はブラタモリ等でもおなじみ、産総研の高橋雅紀先生です。素人にはやや取っつきにくい地質図を理解してもらうため、ご自身で製作された多数の配布教材を使いながら、とても実践的かつ丁寧にご指導いただきました。後半は、日本列島の形成過程について、教材やモデルを使って斬新な解釈を展開していただきました。質疑応答にも大変熱心に応じていただき、人気に違わずとても熱のこもった充実した講座になりました。

巡検C(野外巡検)「地形図や地質図を片手に都内の地形を観察しよう」

日 程

令和元年10月20日(日)13:00~17:30

集 合

東京都調布市 深大寺山門前(京王線調布駅・つつじヶ丘駅よりバス)

解 散

JR国分寺駅前

参加者

32人(中高・大学生6人、中高生の先生10人、その他16人)

講 師

藤平秀一郎(茨城県立結城第一高校 教諭

 8月の2度の講座を受けて、国分寺崖線沿いの地形や湧水を観察して歩く巡検を実施しました。直前に台風19号が首都圏を襲い、各地で被害が発生する中、それでも15歳から70歳代までバラエティに富んだ32人の参加者が集まりました。スタッフは、講師の藤平先生を含め6人。

 集合場所の深大寺境内を出発し、国分寺崖線に沿って、地図を見ながら歩きます。国分寺崖線は台地の縁で、ところどころ湧水が勢いよく流れ出しています。講師の藤平先生からは解説だけでなく質問が飛びます。「今、どこにいますか?」「どうしてでしょう?」参加者は地図を見て確認したり、考えながら歩きます。

 野川に沿って歩いた後、一部バスで移動してさらに上流へ。上流に向かうほど川幅は狭くなりますが、湧水は相変わらず、勢いよく流れ出しています。台地と崖と湧水の関係はたくさん見学できました。貫井神社裏の湧水も観察し、源流に近い国分寺駅で最後のまとめをして解散。皆さんの健脚ぶりには感心しました。ご苦労様でした。

 具体的の行程は次の通り。

 まず、案内者の藤平氏から資料が配られ、今日の見学の概要説明を受けた。集合場所の深大寺の境内奥の崖からは水が勢いよく湧き出ている。その湧水を見学し、「深大寺蕎麦」の話を聞きながら、野川に沿って歩きはじめた。野川は国分寺崖線からの多数の湧水によって涵養されて成立する河川で、崖側から支流が勢いよく流れ込んでいる。この豊富な水量は、先日の台風19号豪雨のためと思われる。

 住宅地を流れる野川に沿って西進すると、川に隣接したテニスコートが水没していた。ここは豪雨時に水を一時的に蓄える遊水地だが、まさに先週の台風19号の水が今もここに溜まり、テニスことは立派に遊水池の役目を果たしていた。野川公園で湧水群を間近に見られるので、各自それを観察し、前半の行程を終了した。

 ここから都バスでJR武蔵小金井駅まで移動し、南口から後半の見学を始める。少し歩くと国分寺崖線にさしかかり、急な下り斜面になる。高低差は10 m以上あった。崖を下ると再び野川が見える。先ほどより川幅は狭く、上流にきたという印象だ。住宅地を抜けながら、崖の方向から流れ出している湧水をみると、講師陣も驚くほど勢いが強かった。貫井神社の裏手では、崖の地層から礫層を観察した。丸く摩耗された砂岩の礫は、遠く青梅市を頂点とする多摩川扇状地の礫がここまで届いたものだ。夕暮れ時になり、辺りは少し暗くなってきたが、野川源流部まで歩みを進める。最後は谷頭の地形となり、傾斜面を登り切ったところが国分寺駅だ。講師の藤平氏から解説の冊子を渡され、一日の行程を振り返りながら台地断面の構造を考察、まとめの会を行い解散した。