日時

 2026(令和8)年6月13日(土)14時30分~16時

会場

 アルカディア市ヶ谷(私学会館)(東京都千代田区九段北4丁目2−25)

参加人数

 84名

講演タイトル

 AIにもわかりやすい赤色立体地図-地形表現の原理と最近の進化

講師

 千葉達朗氏(アジア航測株式会社 先端技術研究所千葉研究室 室長・フェロー)

講演報告

 講師の千葉先生のご専門は、火山学、地形学、地質学、第四紀学でありますが、2002年に地形表現手法「赤色立体地図」を発明されて以降、「赤色立体地図」の改良と普及にも努められています。発明から20年が経過し、LiDARによる高精細データを可視化し、地形の微細な変化を強調する手法として世界的に評価されるようになりました。最近では、様々な場面で「赤色立体地図」を見かけるようになりました。さらに、「クールマップ」や「超解像度赤色立体地図」などの技術開発にも取り組まれ、火山学会や土木学会などの学会活動や、NHKなどのマスメディア対応も積極的に取り組んでいます。教員研修にも取り組んでおり、赤色立体地図の原理や作成法、火山のアナログモデル実験の研修を多数実施されています。また、生成AIの利活用についても取り組まれています。先生の活動については、https://www.lab-ajiko.com/about/labo04/ をご覧ください。

 今回の講演では、「赤色立体地図」の基本原理と着想のきかっけや発明までの経緯とご苦労、発明後から現在までの新たな展開についてお話をいただきました。

 「赤色立体地図」とは、数値標高モデルから得られる傾斜角と尾根谷度を組み合わせ、急斜面ほど赤く、尾根ほど明るく、谷ほど暗く表現した地形画像であり、複雑な地形でも直感的に把握できることが大きな特徴です。地形を直感的かつ精緻に可視化することの着想のきっかけは、写真測量と航空レーザ計測の根本的な違いに気づいたことだったとのこと。写真測量と航空レーザ計測の等高線のすべての測定結果を、余すことなく表現したいという熱い思いが、赤色立体地図を生み出す原動力となったそうです。そしてその原点は、富士山麓の樹木に厚く覆われた青木ヶ原樹海の調査にあったそうです。航空写真の立体視では地表面の微細な凹凸を十分に読み取ることができないため、新たな地形表現手法を模索し、航空レーザ計測で樹木下の地形を捉え、赤色立体地図として可視化することで、地形を面的に把握することが可能とされたのです。先生曰く、「必要は発明の母とよく言いますが、青木ヶ原樹海こそ赤色立体地図の母」とのこと。なお、立体地図を赤色としたのは、立体感が一番あらわれる色として選んだものだそうです。

 「赤色立体地図」の手法はさまざまな用途に利用され、その目的に合わせて改良を重ねられました。地形判読と現地調査への利用例では、伊豆大島三原山付近の1986年噴火に関する判読図が示されました。火口列、溶岩表面の微地形、流下順序などを詳細かつ正確に把握し、GISデータとして扱えるようになり、この判読技術は、斜面防災には大変有効であるだけでなく、地すべりや活断層の現地調査の必携図面としても活用されています。また、埋蔵文化財の調査では曲輪、土塁、堀切などの微地形を読み取りにも応用されています。現地調査の膨大なデータと組み合わせることで、新たな事象の解明に貢献できるかもしれません。赤色立体地図から派生した可視化の考え方は、標高表現の一例として干渉色段彩の紹介がありました。赤干渉色段彩は高度の連続性や微妙な起伏の変化を読み取るための表現で、両者を組み合わせることで、地形の形状と高度構造を同時に把握しやすくなります。月周回衛星「かぐや」のレーザ高度計データを用いた、月面クレーターのような惑星地形の可視化の事例や、都市空間の可視化の事例として、東京都のデジタルツインプロジェクトのデータをもとに作成したCOOLMAPの紹介がありました。

 さらには、生成AIや大規模言語モデルの活用により、空間情報解析にも新しい可能性が生まれている事例の紹介がありました。赤色立体地図、干渉色段彩、COOLMAPによる地形表現は、人間だけでなくAIにも読み取りやすい情報表現へと発展していくのかもしれないとのことです。現場で培われた「地形を見る目」とAIの力が結びつくことで、地形判読と空間情報解析は次の段階へ進んでいくと推察さられているとのことでした。

 そして現在では、赤色立体地図を研究者や技術者だけのものから、一般市民も利用できる共通基盤へと変え、活用の場が大きく広がりつつあるそうです。赤色立体地図は、「地形を見る技術」から「地形を共有する文化」へと発展しつつあるとの言により、講演が終了しました。

 講演終了後の質疑応答では聴講者から多くの質問があり、先生から丁寧な回答なされ大変盛況となりました。あらためて、講師の千葉先生と聴講者の皆さまにお礼を申し上げます。

(文責・行事委員 平田大二)