第318回地学クラブ講演会「国境のある科学を見据えた国境のない科学への貢献-8年間、IUGS (国際地質科学連合)理事を務めて思ったこと-」
東京地学協会では,地学研究の振興と親睦を図るため、平日午後、地学会館(千代田区二番町)で、科学者や技術者に地学・地理にまつわる講演をお願いし、終了後は簡単な懇談な場を設けています。「地学クラブ」は協会設立当時からのサロン的雰囲気を引き継ぐ談話会です。一般の方々も参加でき,参加無料、事前の登録も不要です。お気軽にご参加ください。
日時
令和8年12月3日(木)15:00~
場所
地学会館(東京都千代田区二番町12-2)
交通
- 東京メトロ麹町駅5出口を出て左へ徒歩1分
- JR市ヶ谷駅から徒歩7分
- 四ッ谷駅から徒歩9分
- 東京メトロ半蔵門駅より徒歩9分
演題
国境のある科学を見据えた国境のない科学への貢献-8年間、IUGS (国際地質科学連合)理事を務めて思ったこと-
講演者
北里 洋 (東京海洋大学客員教授)
要旨
私は、2016年から2024年にかけて、のべ8年間に亘り、国際NGOである国際地質科学連合(IUGS)の財務担当執行理事を務めました。財務という仕事は、皆さんが予想するお金を集め、支払うという会計処理にとどまらず、100万人をこえる世界の地質科学研究者、技術者、政府関係者、学生、一般市民に至るまで地質科学の発展と普及活動を支えうるポジションでした。本講演では、8年間に経験したIUGSの役員として印象的な出来事についてお話ししたいと思います。
今回掲げた講演の題目は国境のある科学と国境のない科学との境界に関することです。皆さん、国境はどういった時に感ずるのでしょうか? 日本から外国に行く時には、パスポートが必要で、他国に入国する際にはその国の法律を守る手続きを取らねばなりません。国境の存在を感ずる時です。一方、飛行機で空を飛ぶ際には、国境を超えて飛びますので意識しなくて済みます。空から見た国境は線が書いてあるわけではありません。
私の友人は、国境のことを短歌にしています。
「地球儀をスピンさせれば国々はみなひと色に境は消える」
「地球儀の色分けされた国々が緑一色になる日夢見る」
と読んでいます。まさに、上空から見た地球は国境がない世界です。グローバルサイエンスを目指す研究者は、国境がないことを前提にしています。国境がある世界はドロドロしており、ややこしいからです。賢いです。私が経験した国際組織の実務は、国境を意識せざるおえない仕事でしたので、賢い方は避けます。したがって、周りの方から、「面倒臭いことを引き受けるなんてバカだよね。」と何度言われたことか! でも、誰かがやらなければならないことでした。ただ、やったから見えた世界でもありました。
講演では、「財務のお仕事」、「チバニアンの話」、「コロナ禍で中止になった第36回IGC顛末記」、「DDE事件(表向きの綺麗な話と裏を流れる国の思惑)」、「37回IGC 韓国と日本の歴史認識、政府の対応」、「海域の世界地質遺産」、「IUGSの役員をして得たこと、失ったこと」など、話します。
最近、若い方は国際組織の役員は引き受けない方が多いのですが、個人としてはメリットでも、国としてはデメリットになりうることを最後に述べたいと思います。
